昨年度の研究成果により、電荷結合素子(CCD)放射線検出器の短パルスレーザー入射時の応答信号が得られている。そのため、本年度は、主に昨年度の測定結果に対する理論的な説明を行うため、データ処理のための数値計算クラスライブラリの構築と測定器シミュレーションによる実験結果の検証を行った。 数値計算クラスライブラリの構築では、将来的な拡張を踏まえてオブジェクト指向技術を導入し、分析と設計を行った。可視化への対応についても考慮するため、言語としてJava言語を用いている。しかし、実行速度の面でC言語やC++言語による処理に劣るため、本研究上の処理に関しては、C言語による測定システムを並行して開発し用いた。開発したクラスライブラリは、必要な数値計箪をほぼ網羅しており、より高速な演算能力を持つ計算機を用いることで、測定にも利用できると考えている。今後、現行のC言語による測定システムとの入れ替えを計っていく予定である。 昨年度の測定により得た結果の理論的裏付けのため、モンテカルロシミュレーションにより、電荷分配の様子を再現した。電荷分配は内部電場によるものと考えられるため、出力信号を再現することで、間接的に内部電場を主要因とする検出器内部での電子の動きを考察することが可能である。本年度の研究により、測定に用いているCCD検出器では、強い電場を持つ空乏層の領域は、信号が発生する有感領域の10%程しかなく、その他の電荷の多くは、弱い電場を持つ中性領域で生成されていると結論付けられる。 これらの研究により、ピクセル半導体検出器の内部を、出力信号から考察する方法の基礎的研究を纏めることができた。今後、研究を更に進めることで、実時間で測定と表示を行えるように発展させることを検討中である。
|