研究概要 |
反対称化分子動力学の手法により不安定原子核の構造を研究し、不安定核の励起状態に、様々な構造が現れることを発見した。特筆すべきものには、従来知られていない新しい種類のクラスターの出現を理論的に示唆し、実験データの説明に成功したことがある。例えば、^<12>Beにおける^6He+^6Heクラスター構造などがあげられる。また、^<14>Beにおける^8He+^6He的な構造をもつ励起状態を予言し、さらに重い中性子過剰核にも奇妙なクラスター構造をもつ励起状態が頻繁に見られる可能性を示唆した。また、幅広い質量数領域の核構造の記述に有用な相互作用として、有限レンジの3体力を含む新しい有効相互作用を開発し、^4Heから^<40>Caまでの原子核の結合エネルギーと半径を一つの相互作用で統一的に記述することに初めて成功したことは重要な成果である。開発された有効相互作用を用いて、^<40>Ca近傍の原子核の励起状態を大きな変形をもつ様々な状態が低エネルギー領域に現れることを理論的に発見した。これらの励起状態は,ごく最近ガンマ線測定で実験的に発見された回転帯に良く対応している。従来の研究ではクラスター的構造は比較的軽い原子核や特殊な核に限られていたが、今回の研究では一般の原子核においてクラスター構造に起因する多様な奇妙な変形状態が現れる可能性を示唆した。不安定原子核においてもクラスター的な相関からくる奇妙な変形の可能性が考えられることはユニークな結果である。
|