渦巻銀河の回転曲線の観測等から存在が指摘されている暗黒物質の候補として、既知及び未知の素粒子が提案されている。その検証を試みる研究の準備として、検証に必要な測定器の基礎的な研究を行なった。超対称性理論で予想されるニュートラリーノと呼ばれる粒子はこの様な暗黒物質の有力な候補として挙げられている。もし、ニュートラリーノが暗黒物質であれば地球上に置いた検出器中の原子核との断性散乱により検証することが原理的に可能である。ただし、期待されるニュートラリーノー原子核弾性散乱の確率が非常に小さいため、地上に置く検出器には出来るだけニュートラリーノとの散乱断面積の大きな原子核が要求される。ニュートラリーノと原子核の散乱にはスピンを通して結合する成分があるため、フッ素(^<19>F)等の原子核が散乱断面積が大きく、これを利用できれば有利な検証を行なうことが可能になる。 本研究で検討したヘキサフルオロベンゼン(C_6F_6)はフツ素(^<19>F)を多く含み、液体シンチレータの主成分となりそれ自身が検出器として利用できる。 本年はヘキサフルオロベンゼンを始めとして、シンチレータの発光特性や放射線計測におけるデータ収集系等の基本的な研究を行ないニュートラリーノ検証実験に向けての計測技術の蓄積を行なった。 また、この様なシンチレータを用いた放射線の計測技術を、他の放射線を研究手段として用いる物理研究において応用を試みた。
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