研究概要 |
ペロブスカイト型酸化物プロトン導電体のプロトン導電性は、母体結晶と価数の異なるドーパントイオンによって生じた格子歪みと密接に関係する。EXAFS(Extended X-ray Absorption Fine Structure)法を用いてドーパントイオン周りの局所構造を調べ、ドーパントイオンがペロブスカイト構造をどのように歪ませているのかを明らかにすることが、本研究の目的である。 高エネルギー加速器研究機構、物質構造科学研究所にてプロトン導電体SrZr_<1-x>Yb_xO_3(x=0.00,0.05,0.10)のEXAFS測定を行った。母体結晶中Zrイオンは酸素八面体中心の反転対称位置に配置され、ドーパントイオンYbはこのZrイオンと置換される。Zrイオン周りと、Ybイオン周りの局所構造を温度因子も含め詳細に調べた結果、Ybイオンは酸素八面体の中心からシフトした位置に配置されている可能性が高いことがわかった。これまで考えられていたYbイオンと酸素間の距離とは大きく異なり、約0.2Åの差を持つ短いボンドと長いボンドでYb-酸素は結合していることを明らかにした。このことは、Ybイオンを置換したことにより結晶内で双極子モーメントが発生していることが考えられる。結晶の誘電性とイオン導電性との関わりが大変興味深く、今後さらに、誘電率のYbイオン濃度依存性を調べ、プロトン導電性との接点を追求していく予定である。
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