本研究では光によって電子スピンのコヒーレント状態を生成した後、生成されたコヒーレンスを光学的に観測し、構造の測定に利用するのが目的である。スピンのコヒーレンスの位相や消失時間(横緩和時間)などを調べる手段としてはマイクロ波を用いたスピンエコー法がすでに実用化されている。そこで高速パルス回路、および制御プログラムを作成し、現有するESR測定装置に組み合わせて電子スピンエコー測定システムを作成した。目標の性能(最小ディレイ100ns、ジッター<2ns)を確認し、これを用いて、いくつかのサンプルに対して電子スピンの縦緩和時間、横緩和時間、および核スピンによる揺らぎ(ESEEM)の測定をおこなった。 次に、これと対応した光学的手法の実験をおこなうにはマイクロ波の波長(9.5GHz=約3cm)の数倍、10cmオーダーの長いディレイラインをもったポンプ-プローブ測定系が必要である。高精度の測定のためには、光学系の揺らぎを参照レーザー光の強度をモニターし、PLL回路を用いたアクチュエーターへのフィードバックにより光学系を安定化させる必要がある。このシステムは現在作成中である。
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