申請者は、光活性層に半導体CuCl微粒子を用いた種々の微小光共振器を作製し、励起子-光子強結合系に対する光閉じ込め効果及び光制御の研究を行っている。平成12年度は、誘電体多層膜鏡(λ/4)TiO_2/(λ/4)SiO_2の上に堆積させたCuCl量子ドットや回折格子上に光活性層を堆積させた分布帰還型共振器において自然放出光の増強が観測されることを明らかにした。以上の成果については、今年度の国際会議で発表し論文とした。さらに最近は、誘電体多層膜鏡(λ/4)TiO_2/(λ/4)SiO_2の上に形成される光の定在波の腹或いは節位置に(λ/8)膜厚のCuCl量子ドットを堆積させた系において、通常のCuClドットと比較して、腹に配置させた試料では自然放出光の増強が、節に配置させた試料においては自然放出の抑制が観測でき、自然放出が制御可能であることを見出した。この成果については春の物理学会で発表を行う予定である。 また活性層を誘電体多層膜で挟んだ分布ブラッグ反射型共振器を精度良く作製するために、光透過及び反射の良好な(λ/4)TiO_2/(λ/4)SiO_2誘電体多層膜鏡の作製条件を確立し、誘電体多層膜鏡の中央をλ/2膜厚とした共振器構造(光フィルター)を作製した。その結果、Q値(共振器の鋭さを示す指数)が150という理想値(300)に近い共振器構造が作製できた。今後、この共振器構造の中央に光活性層を挟んだ分布ブラッグ反射型共振器を作製し、自然放出・誘導放出の制御の実験を行うとともに、励起子-光子強結合系において位相の揃った励起子による協同現象である励起子超放射の発現を目指す。
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