これまでLa系高温超伝導体における電子比熱の精密測定(T<120K)から、(1)T_cより高温のある温度T^*以下で擬ギャップによると思われる状態密度の減少が見られること、(2)低ホール濃度領域のT^*が高い試料では、T_cでの超伝導転移に伴う電子比熱異常がBCS理論の結果とは異なり、むしろ液体ヘリウムの超流動転移で見られるλ転移に似ていることを報告してきた。しかし、La系では擬ギャップの存在がまだ確定していないため、擬ギャップとλ転移的(ボーズ凝縮的)電子比熱異常の相関がはっきりしなかった。そこで、本年度は電子比熱の擬ギャップ的振る舞いが系に本質的かどうかを調べる目的で、銅サイトに少量のニッケルを添加し超伝導を若干抑制した試料において電子比熱に対する不純物効果を調べた。その結果、電子比熱の擬ギャップ的振る舞いが超伝導と同様にNi添加によって抑制されることが分かった。このことからLa系の電子比熱に見られた擬ギャップ的振る舞いは系に本質的で、やはりLa系においてもBi系やY系と同様に(小さな)擬ギャップが発達すると考えられる。 また、擬ギャップとλ転移的電子比熱異常との関連性をBi系等の他の系において調べるために、申請者らの断熱法比熱精密測定装置を〜300Kまで測定可能な装置に改良した。〜200Kまでは既にデータが出始めており、現在測定温度をさらに高温側に広げるために、新たに購入した温度コントローラを用いた測定プログラムを開発中である。また、試料に関してはFZ炉を用いて作成したBi系の単結晶試料を準備している。得られたBi系単結晶試料でトンネルスペクトルの温度依存性を測定し、T^*付近から顕著に擬ギャップが発達することを確認した。今後、この良質な単結晶試料を用いて〜300Kまでの電子比熱を測定し、Bi系において擬ギャップとTcでの電子比熱異常との関連性について詳しく調べていく予定である。
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