研究概要 |
補助金で購入した消耗品(原料粉末Eu, Yb等)および設備備品(赤外線ゴールドイメージ炉等)は試料合成に十分に活用され、次の成果を得るに至った。また補助金の一部は、成果の学会発表のための旅費として使用した。 1.Th_3P_4型既知化合物MnGd_2S_4およびMgGd_2S_4の試料合成に成功し、各化合物の磁化率測定から次の新たな知見を得た。MnGd_2S_4は約40K以下の低温において強い磁気的フラストレーションを有しており、Mnを非磁性のMgで置換すると、この温度域におけるフラストレーションからは解放される。MnGd_2S_4ではさらに低温の約4Kで磁気モーメントがグラス凍結することが判明した。興味深いことに、MgGd_2S_4においても同様のグラス転移が約4.5Kで発現した。このことは、磁性元素を含む三元系で構成されるTh_3P_4型化合物において、磁気的フラストレーションがintrinsicなものであることを示唆している。 2.MnGd_2S_4においてMnやGdを他元素で置換した未知のTh_3P_4型化合物は得られず、三元系でこの構造を形成するためには、カチオンの波動関数が球形に近いことが強く要請されると考えられる。 3.Th_3P_4型結晶構造をとると言われるYbSb_4Te_7が、立方Th_3P_4型構造から菱面体晶型へと構造相転移している可能性が示唆され、現在、引き続き検討中である。 4.anti-Th_3P_4型のEuあるいはYbを含む数種の三元系未知化合物の合成を試みたが、目的物質を得るには至らなかった。これは合成方法の改良により遂行可能と考えており、既知のanti-Th_3P_4型化合物を含めた系統的な物性研究を継続して行っていく予定である。 上の成果や関連したスピネル型MnYb_2S_4に関する研究について、現在2編の論文を投稿準備中である。
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