収束電子回折法による電荷・軌道秩序状態の観察

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12740199
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 津田 健治 東北大学, 科学計測研究所, 助手 (00241274)
• キーワード: 収束電子回折法 / 電子密度分布 / 精密結晶構造解析 / 電荷・軌道秩序 / 遷移金属酸化物 / ペロブスカイト構造 / 動力学回折理論 / エネルギーフィルター透過電子顕微鏡

研究概要

1.収束電子回折法を用いて電子密度分布を得るための解析手法について検討した。これまでわれわれが独自に開発してきた収束電子回折強度解析のための汎用ソフトウェア(MBFIT)に、精密化した結晶構造パラメーターおよび低次結晶構造因子からポアッソン方程式を用いて電子密度分布を求める機能等を追加・拡張した。また、低次結晶構造因子をより高い精度で精密化するための実験条件について、動力学回折理論によるシミュレーションを行って調べた。
2.電子密度分布解析の最初のテストとしてLaCrO_3の高温菱面体相を取り上げた。実験で得たエネルギーフィルター収束電子回折強度と動力学回折理論による強度計算をフィッティングすることにより、原子位置、等方性および異方性熱振動パラメーター(デバイ・ワーラー因子)の精密化および低次結晶構造因子の精密化を行った。解析結果は八面体頂点位置の酸素原子の異方的な熱振動を明瞭に示していた。さらに、この結果から、上で述べた改良を加えた解析ソフトウェアを用いて電子密度分布を求め、LaおよびCr原子からO原子への電荷移動を可視化することに成功した。
3.軌道秩序を起こすLaMnO_3の電子密度分布解析に着手した。われわれの開発したエネルギーフィルター透過電子顕微鏡JEM-2010FEFを用いて、試料のナノメーター領域からエネルギーフィルター収束電子回折図形を撮影した。現在このデータを用いた解析が進行中である。

研究成果

• [文献書誌] K.Tsuda et al.: "Convergent-Beam Electron Diffraction Study of the Low-Temperature Ferromagnetic Insulator Phase of La_<1-x>Sr_xMnO_3 (x=0.11,0.12)"J.Phys.Soc.Jpn.. 70・4(印刷中). (2001)
• [文献書誌] K.Tsuda et al.: "Space group determination of the room-temperature phase of α'-NaV_2O_5 using convergent-beam electron diffraction"J.Phys.Soc.Jpn.. 69・7. 1939-1941 (2000)
• [文献書誌] K.Tsuda et al.: "Electron diffraction study of the phase transformation of α'-NaV_2O_5"J.Phys.Soc.Jpn.. 69・7. 1935-1938 (2000)
• [文献書誌] T.Hashimoto et al.: "Determination of the space group of LaCrO_3 by convergent-beam electron diffraction"J.Electrochem.Soc.. 147・12. 4408-4410 (2000)
• [文献書誌] T.Hashimoto et al.: "Analysis of crystal structure and phase transition of LaCrO_3 by various diffraction measurements"Solid State Ionics. 132. 183-190 (2000)
• [文献書誌] K.Tsuda et al.: "Distinction of space groups (I23 & I2_13) and (I222 & I2_12_12_1) using coherent convergent-beam electron diffraction"Acta Cryst.. A56・4. 359-369 (2000)