本研究は、高温超伝導体LSCO系の遠赤外領域に現れる、ジョセフソンプラズマ反射を用いて、その面間超伝導特性と電荷ストライプ形成の関係を調べ、超伝導相とストライプ秩序相の間の共存・競合関係を明らかにしようというものである。本年度は、正孔濃度1/8付近に焦点を絞り、ジョセフソンプラズマエッジの磁場に対する応答を調べた。 (1)所属研究室が所有していたフーリエ赤外分光器および、超伝導磁石の改良を行い、当初の目標であった、直径3mmの試料でエネルギーが15cm^<-1>以上の測定が安定して行える、という性能を達成した。 (2)ジョセフソンプラズマエッジの磁場依存性は、正孔濃度1/8を境界に大きく異なり、それ以下で、顕著な磁場依存性を示し、それ以上で、最高磁場7テスラまで磁場変化しないことを明らかにした。この結果は、正孔濃度1/8以下のアンダードープ域で、ストライプ秩序相が超伝導相と競合し、面内超伝導のみならず、面間超伝導結合を弱めていることを示している。 (3)当初の研究目的の副産物として、磁場中遠赤外分光が、LSCOの磁束状態の研究に有用な情報を提供することが明らかになった。この種の観測は、ジョセフソンプラズマ共鳴がマイクロ波領域に現れるBi系高温超伝導体ではすでに多数報告され、強い2次元性に由来する「パンケーキ磁束状態」など、新しい概念を提供しているが、さらにエネルギーの高い遠赤外領域にジョセフソンプラズマエッジの現れるLSCO系では、測定の困難さから過去に1例しか報告がなく、Bi系の特異な磁束状態がどこまで一般的なものか明らかになっていない。来年度には、さらにこの点も研究を進める。 現在、以上の結果をまとめた投稿論文を執筆中である。
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