昨年度に引き続き、カリウム金属原子を吸着させたLTA型ゼオライトについてNMRを用いた研究を行った。今回は外部磁場の大きさを変化させ、NMRスペクトルの変化を検討した。その結果、中心線の線幅は外部磁場増加に伴って増えるものの、その両脇に現れる微弱かっ左右対称なピークの位置は磁場依存をせずに一定の周波数シフトを保つことがわかった。前者の変化は常磁性磁気モーメントの成長によるものと理解される一方、後者はその磁場依存性から核四重極相互作用に伴う1次のシフトによるものであると考えられる。ここで問題になるのは、観測されるピークが1組であることである。もし全ての^<27>Alサイトが同じ電場勾配にさらされているとすると、核スピンが5/2であることからの帰結としては2組のピークが観測されなければならない。この矛盾を解消するには、電場勾配が異なる複数サイトのスペクトル和を考えることが必要である。そこで数値シミュレーションを実行したところ、核四重極結合定数がほぼ一様でかつ非対称定数が分布すると仮定したとき、実験結果を最も良く再現できることがわかった。この結果は第14回核四重極相互作用国際会議において報告し、諭文の形でまとめられた。 次に、外来原子に対する吸着ポテンシャルが弱い試料に着目した。すなわち、LTA型ゼオライトのプレーム自身に含まれるSiとAlの比率を変えてSi/Al=1.5にした試料に着目し、^<27>Al核のNMRを観測した。その低温における線幅はSi/Al=1の場合と同様に常磁性磁化の影響を受けて増加した一方、約100K以上の温度では高周波数側に新たなシフトを示すピーク成分が見出された外部磁場強度依存性を確認したところ、このピークのシフトは磁場に比例する事がわかり、カリウム金属の影響を受けたナイトシフトである可能性が指摘された。現在、その結果報告を作成中である。
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