密度汎関数理論における交換・相関エネルギー汎関数を、Kohn-Sham一電子軌道自身で陽に表す方法はOptimized Effective Potential(OEP)法と呼ばれる。このOEP法に沿って、最近私が提案をした新しい表式には、長、中、短距離相関を簡潔に表す有効相互作用なる概念が導入されている。本年度は、この相関エネルギー汎関数に含まれる有効相互作用を電子液体の知識を用いて具体的に数値計算し、バンド計算に適用できる形にまとめ上げることに成功した。具体的には以下の3段階で有効相互作用を構築した。 1.長距離相関の効果はRPAの解析的表式を用いて計算した。長距離相関を反映して、有効相互作用は長距離で遮蔽され無限遠方では完全遮蔽されるものであった。 2.次に短距離相関を加えるために粒子-粒子梯子型近似をRPAの表式に融合した。粒子-粒子梯子型近似の積分方程式の解析的近似解を利用して、長、短距離相関を融合した表式が得られる。数値計算を実行した結果、有効相互作用は短距離においても大きく弱められることがわかった(例:r_s=4で裸の相互作用の約40%)。 3.最後に電荷揺動とスピン揺動の結合の効果を取り込んだ。これは、交換項の直接項への間接的効果を考慮することに相当し、具体的には有効相互作用を直接項と交換項で自己無撞着に決定する。数値計算の結果、有効相互作用は中距離においても弱められるものの長、短距離相関にくらべればその効果が小さいことがわかった。これは電子がどのように相関しようとも中距離でクーロン相互作用を効率良く弱める機構がないことを意味している。 以上により求められた有効相互作用を使って相関エネルギー汎関数が具体的に完成した。13年度はこれを実際のバンド計算に適用し、個々の物質に固有の電子相関効果を解明して行く予定である。
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