研究概要 |
1次元XXZ模型(異方的ハイゼンベルグ模型)は1次元可解量子スピン系の代表例である。1次元格子の隣接する格子点上のスピンが相互作用し、そのXおよびY成分の結合定数をJと表すとZ成分の結合定数はJΔで与えられる。変数Δはスピン相互作用の異方性を表すパラメターである。例えばΔ=1のとき等方的な強磁性ハイゼンベルグ模型に、Δ=∞のときイジング模型に対応する。以下、周期的境界条件を仮定する。また、1次元格子点の総数Lは任意の自然数であるとし、偶数でも奇数でも良い。 この異方性変数Δがある離散値の場合(Δ=cos(2πp/N))に、1次元XXZ模型のハミルトニアンのスペクトルには非常に高い縮退が存在することを我々は明らかにした。ここでNとpは2以上の任意の自然数である。異方性変数がこの離散値の場合、転送行列と独立でかつ1次元XXZ模型のハミルトニアンと交換する(無限個の)演算子が存在し、それらが全体としてsl_2ループ代数という無限次元の代数を形成することをはじめて見出し、さらに証明を与えたのである。(T.Deguchi,K.Fabricius and B.M.McCoy,cond-mat/9912141,to appear in J.Stat.Phys.(2001).) 転送行列と交換するこれらの新しい量子演算子は、量子群U_q(sl_2)あるいはそれをアファイン化したU_q(s^^<^>l_2)の演算子を用いて表される。例えば、全スピン角運動量演算子の量子群的変形版をS^-と表すと、そのN乗の演算子(S^-)^Nが(ある条件下で)ハミルトニアンと交換する。具体的には、全角運動量S_zの値がNの整数倍であるような固有空間の中で交換する。変数qをq^<-1>に置き換えたとき、演算子S^-から別の演算子T^-が導かれる。このとき、そのN乗の演算子(T^-)^Nも転送行列と交換する。この結果、例えば2^<L/N>個の縮退した固有状態が生成される。この中の一個だけが従来のベーテ仮説固有状態に対応する。 以上の結果は数学的に厳密で、今後、1次元XXZ模型の固有状態の分類や完全性の議論において決定的に重要な役割を果たすであろう。
|