量子力学は、非常に離れた地点に存在する物理現象にもそれらの間の相関を予言する。その相関は、たとえば測定や物理量を局所的に記述できる立場からは、超光速の相互作用が存在しているかのように見える。そのような性質を「非局所性」とよび、そのような性質の存否をめぐってさまざまな議論が行われてきた。ベルの不等式とは、「測定や物理量を局所的に記述できる」場合に満たされなければならない不等式である。ベルの不等式が実際に破れていること、すなわち量子力学の非局所性の検証は、1984年のアスペによる光子対を用いた実験以来さまざま行われてきた。しかし、それらすべての実験には、「発生した光子対を十分な量検出できていない」という、「量子効率の抜け穴」とよばれるものが存在した。 それらの実験のひとつとして、光子対をビームスプリッタへ入射する実験がMandelらによって行われた。われわれはその検出器として「高量子効率光子数検出器」を用いる方向で研究に取り組み、今回、より遠赤外線の迷光を確実に減らすことをめざし、あらたにクライオスタット用シールドを作成した。これにより実験に必要な2台の光子検出器を立ち上げることができた。 また、光子対源を用いたMandel型の実験にも取り組み、その途中段階でビームスプリッタによる光子パンチングの確認に成功した。しかし、実験の過程で、モードマッチングの困難さ等に直面し、結果的にベルの不等式の破れを確認するまでにはいたらなかった。 今後は、実験方法をあらため、新しくもつれ合った明るい光子ビームを開発するなどの方法で、引き続き量子力学の非局所性の検証実験に取り組んでゆきたい。
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