エネルギー準位分布相関の普遍性は、不純物を含む半導体の固体物理や量子カオス系の半古典論において指導的な役割を果たす概念であり、ランダム行列モデルによって再現される。ランダム行列モデルの研究とその微視的な正当化の二つの面において、近年大きく発展している研究分野である。最近の進展として、組合せ論におけるYoung Tableauxの理論との関連を通じて、普遍的な相関の概念は、表面成長過程や非対称排他過程などの非平衡統計物理におけるゆらぎ現象にも応用されることがわかってきた。このような非平衡統計物理への応用における基本モデルとして、多体ランダムウォークのVicious Walker問題をとりあげ、Walker間の任意次数の相関関数が、一般に四元数要素をもつ行列の行列式の形に書けることを示した。四元数要素は、離散測度上の直交多項式であるHahn多項式を使って書き表される。さらに、時間と空間の適当なスケーリング極限(Diffusion Scaling Limit)をとることによって問題を連続化して、Walker間の動的な相関関数の(Walker数無限大の極限における)漸近的な振舞を評価することにも成功した。これにより、新しい非平衡統計物理への応用において、普遍的になるべき基本物理量が明らかになった。また。動的相関関数の結果は、量子系のエネルギー準位統計においては、不純物を含む系あるいは量子カオス系に対して磁場をかけたときの応答に相当するものであり、その微視的あるいは半古典的な導出が興味深い問題となってきた。
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