地殻・上部マントルの不均質性が異常震域を生成するメカニズムを明らかにするために、(1)短周期高密度地震観測網(Jarray)の地震波形記録を用いた、日本列島の波動伝播の特徴およびその地域性の研究と、(2)大規模3次元波動伝播の数値シミュレーションのための「PSM/FDMハイブリッド型並列計算法」の開発を行った。日本周辺で発生した浅発内陸地震および、やや深い海溝型地震について、東北日本および西南日本の波動伝播のJarray記録を解析し、西南日本ではLg波や表面波が強く励起されることを明らかにした。また、東北日本で見られる異常震域の原因と考えられる周期2Hz以上の短周期地震動は直達S波によってもたらされており、Lg波などの後続相は関係していないことを明らかにした。北海道-東北-北関東にわたる1000km^*500kmの領域を含む3次元波動伝播シミュレーションを行うために、差分法(FDM)と擬似スペクトル法(PSM)とを結合したハイブリッド型の計算法を新たに開発した。これは多数のCPUを用いた並列計算機において高い演算性能を発揮する。その有効性を明らかにするために、1999年台湾集集地震の3次元波動伝播シミュレーションを実施した。断層の不均質すべりと3次元的に不均質な地殻・上部マントル構造により、震源から150km以上にわたって生じた強振動地動速度分布を説明することに成功した。また、H13年度の予備的研究として、2000年鳥取県西部地震における表面波の生成伝播のシミュレーション、および沈み込むフイッリッピン海プレートにより震度分布が遠地まで延びる効果について1954年南海地震を例に3次元数値シミュレーションを行った。
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