本年度は昨年来研究を続けてきた1998年飛騨上高地群発地震の震源過程に関する解析に加え、多数の中規模地震、さらに6月下旬から始まった2000年伊豆諸島中部群発地震の解析を主に行った。飛騨上高地群発地震ではM4-5の18個の地震の震源過程を詳細に調べ、中規模地震でも複雑な破壊プロセスを持つことを示した上で破壊伝播速度と応力降下量が負の相関にあることを示した。これらの内容は現在Tectonophysics誌に投稿、2次審査中である。さらに不均質破壊過程解析のためのフォーマットとプログラム群を整備し、その使用法に関する解説を準備し、共同研究の形で他研究者へ提供し始めた。これにより、1999年の台湾地震や今年の鳥取県西部地震の解析が行われた。研究の過程で不均質断層モデルと対照させるべき平均的なイベントの性質を明らかにする必要が生じた。これを解析するためのツール群を整備し、飛騨上高地群発地震、伊豆諸島の群発地震に適用した。多数の地震の平均的性質を表すパラメーターと地下減衰構造に関するパラメーターを同時決定することが可能になり、地震の特徴と減衰構造の特徴を対比して議論可能になった。飛騨上高地の群発地震では群発地震の発展と減衰構造が強く関係していることが示唆された。また不均質断層モデルは平均的性質では明らかにされない特徴をも抽出可能であることを確認できた。平均的性質推定の方法は定常地震活動にも適用され、応力降下量や減衰構造の空間分布を広域的に明らかにすることに成功している。これらの内容は日本地震学会秋季大会、American Geophysical Union Fall Meeting等で発表し、現在論文として投稿準備中である。
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