研究概要 |
本研究の目的は地震波の中でも特に高周波(およそ1Hz以上を想定)の地震波が震源断層面上でどのように生成されるかを,数値シミュレーションによるアプローチにより明らかにすることにある。今年度は「震源過程のどのような因子が地震波形にどのように効くか」について,破壊力学を度外視した(=kinematicな)震源モデルについて検討した。kinematicなモデルを使ったのは,震源モデルの種々のパラメータを独立にいじることができるからで,まずこれでどのパラメータが波形にどう効くのかを見極めてから,破壊力学を考慮したシミュレーションに移りたい。 40km×20kmの垂直・右横ずれ断層面を考え,断層面上に2つのすべり量の大きい領域を置いた。地震波形は断層面上に等間隔に置いたgridからの波のfar-field termの重ね合わせで計算した。さまざまな震源パラメータをいじり,波形にどう効くかを検討した。結果を以下に記す。 1.backwardでは破壊伝播関数の継続時間が間延びして,地動速度波形の直達波のはじめと終わりにすべり速度関数が明瞭に見える。 2.forwardでは破壊伝播関数の継続時間が短くなり,すべり速度関数のパルス幅とないまぜになるため,backwardのように地動速度波形にすべり速度関数が明瞭に見えることはない。 3.asperity内ですべり量にゆらぎを与えても,forward,backwardのいずれの観測点でも地震波形にはあまり効かない。 4.破壊時刻のゆらぎは,forwardではあまり効かないがbackwardではよく効く。 9.forwardの観測点では ・rise timeと破壊伝播速度の間 ・rise timeとすべり量分布のなめらかさの間 にtrade-offが見られることがわかる。bachwardの観測点では,rise timeの違い程度はかろうじてわかる。
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