しもざらめ雪の形成に伴い、積雪中の酸素・水素の両安定同位体比プロファイルが変化することが知られている。これまでの予備実験により、温度勾配をかけた積雪試料の高温側はδ値が増加し、低温側では減少することが分かった。さらに、重力による対流の効果や、動的同位体効果による安定同位体分別の昇華速度依存性の存在などが示唆された。以上の成果をさらに様々な条件下(温度・温度勾配・積雪密度・雪質・粒径など)で行なうために、より精密な環境コントロールを行ない、安定同位体分別の温度・積雪密度依存性を明らかにすることが課題である。 そこで平成12年度では、新庄雪氷防災研究支所雪氷防災実験棟のしもざらめ雪生成装置を利用することにより、積雪サンプルの安定同位体変化を定量的に求め、積雪内水蒸気輸送の平均輸送距離とその温度・積雪密度依存性を明らかにすることを目的として室内実験を行なった。温度勾配をそれぞれ正方向・負方向にかけた積雪サンプル2つが作られ、粒径・積雪密度の測定や安定同位体分析用のサンプリングが行なわれた。また、これと同時に、温度勾配をかけずに雪面を昇華蒸発させる実験を行ない、様々な昇華速度条件下で積雪表層のどの深さまで安定同位体比が変化するか、を調べた。現在は、質量分析計による安定同位体サンプルの測定(酸素及び水素)が行なわれており、得られつつある水素同位体データからは、積雪表層の数cm深まで同位体プロファイルが容易に変化しうることが判明した。現在、さらに定量的な考察を進めている。
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