研究概要 |
沖縄舟状海盆北部の陸棚斜面からトカラ海峡における黒潮流路変動の力学を解明するために、現実的な海底地形上での黒潮流路の定常多重性と、黒潮前線波動に対するそれらの流路の安定性および変動特性を、流入流出モデルを用いて数値実験的に調べた。流入流出モデルには、シグマ座標モデル(POM)を用いた。水平解像度は5km×5km、鉛直解像度は15レベルである。数値実験の特色は,トカラ海峡近辺の複雑な海底地形を、約10kmの高解像度で再現した点にある。以下に、本研究で得られた主要な結果を述べる。 1.黒潮流路の定常多重性 初期流路分布の違いに対して、安定した2つの黒潮流路が形成された。1つは、トカラ海峡の北側を通過する流路(北流路)であり、もう1つは、南側を通過する流路(南流路)である。黒潮流路の2重性は、海底地形の制約のない400m以浅の表層で起こる。この結果は、近年、観測から指摘されている黒潮流路の2重性の存在を支持するものである。 2.黒潮前線波動に対する黒潮流路の安定性および変動特性 波長が150〜500km内の6種類の前線波動を流入境界から注入した結果、波長200kmと400kmの前線波動に対して、最も頻繁に流路の不安定化が起こった。このことは、黒潮流路の蛇行スケールが約400kmであることから、前線波動に対して流路蛇行が共鳴を起こし流路が不安定化することを示唆している。南流路から北流路への遷移は、陸棚斜面に沿って伝播する高気圧性渦が引き金となり、逆に、南流路から北流路への遷移は低気圧性渦が引き金となる
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