梅雨季の日本付近では、中間規模低気圧および前線の出現等に伴い対流活動が活発化し、各地に激しい降雨をもたらす。特に九州地方では、このような時期に集中豪雨が発生する。本研究では京都大学が開発したS帯境界層レーダーを中心手段とした九州地方での降水システムの観測を行い、地形性の停滞降水系と中間規模擾乱に伴った移動性降水系の合流による局地的降雨の発達・維持メカニズムを明らかにすることを目的とする。 2000年6月18日〜7月9日に鹿児島県の上甑島にS帯境界層レーダーを設置し、降水システムの観測を行った。また降水システムが接近・通過時には下甑島でGPSゾンデを放球した。今回の観測期間中には、下層の風速が弱かったため地形性の降水システムを発生しなかったが、前線の接近・通過に伴い移動性の発達した降水帯を数例観測することができた。また、海上で形成された線状降水帯の内部構造を観測した。これらの解析には、境界層レーダーデータと気象衛星画像、現業気象レーダーデータ、AMeDASデータとの比較・結合を行い、降水雲の空間分布・変化に伴う降水システムの複雑な風速変動を調べることができた。また、線状降水帯内部では、数十分(メソγスケール)の南西風の強化が存在することが明らかになった。さらに、境界層レーダーから得られた降水強度・降水落下速度から、降水システム内の鉛直流を見積もり、降水システムの発達・維持機構メカニズムの考察に役立てた。これらの結果の一部について、2000年秋季日本気象学会で報告を行った。
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