本年度は、磁気圏プラズマの粒子観測データと「のぞみ」衛星に搭載した極端紫外光撮像装置からの光量に関するデータとを比較し、磁気圏撮像が将来可能であるかどうかを検討した。具体的には、粒子別プラズマ組成観測データのうち、ヘリウム一価イオンの空間分布を計算し、磁気圏尾部のヘリウム一価イオンの総量を算出した。ヘリウム一価イオンからの光量は非常に微弱なため、ヘリウム一価イオンを光学観測することは不可能と考えられてきたが、約1週間にもわたる連続観測のデータを使用することにより、その量を明らかにすることができた。両者のデータを比べることにより、磁気圏尾部にはこれまでの粒子観測では検出できなかった冷たいプラズマが存在していることを明らかにした。この結論は、さらに発展した極端紫外光撮像装置を開発すれば磁気圏撮像は可能になるということを主張しただけではなく、磁気圏尾部には、なぜプラズマが冷たいままで居られるかという新たな疑問も我々に提起した画期的な成果である。 また、同年度中には、多層膜回折格子の製作に取り掛かり、極端紫外領域の光学部品の改良にも努めた。
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