研究概要 |
美濃帯南部の鈴鹿山脈地域には,玄武岩海山,その頂部・斜面の石灰岩,海山周辺の海洋底のチャートを起源とするブロックと,玄武岩火山砕屑物の基質からなる岩屑なだれの堆積物が広く分布している.この岩屑なだれは,ペルム紀に大洋領域で起こった海山の山体崩壊に伴い発生したと考えられている.本研究の目的は,海山崩壊に伴う岩屑なだれの流動・堆積機構を,その変形・堆積構造に基づき,解明することにある.本年度の当初計画に従って以下の成果を上げた. 1.研究地域北部の霊仙山から,御池岳,藤原岳,龍ヶ岳の約35kmの長さに及ぶ鈴鹿山脈脊梁部分とその周辺部分を,野外踏査した.その結果,多賀市東方の鞍掛峠付近において.泥質チャート上位にあるほぼ平行であるが不規則な境界面で,玄武岩と石灰岩の岩屑なだれ堆積物が累重していることが確認された.但し,露頭が横幅50m,高さ30mあり,境界部分が高さ約15m程度のところにあり,積雪期に向かうために,精密な観察が出来なかった.計画としては,来年春に境界部分の再調査を行う予定である. 2.明らかに上位に石灰岩が累重する玄武岩の化学分析を,九州大学大学院比較社会文化研究科のXRFでおこなった.玄武岩から石灰岩への整合の認定は,境界部分の岩相に他の岩相の粒子が混じり合っていること,その量が境界に向かって多くなっていること,境界部では2つの岩相が細互層していることした.これらに該当する整合部分は,調査地域の十数カ所の露頭において認定でき,その内2つの露頭の玄武岩については,ホットスポット起源であるという結果が得られた. 3.美濃帯との比較研究のために,九州中央部に分布する秩父最南部の三宝山帯の調査を行った.三宝山帯においても,鈴鹿山脈と同様に玄武岩砕屑岩基質中に石灰岩が混じっている混在岩相が確認できた.
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