美濃帯南部に広がるペルム海山の山体崩壊に伴う岩屑流堆積物の流動・移動機構の解明を目的として、岩屑流堆積物の広がり、地域ごとの産状の違い、玄武岩の化学組成の違いについて調査を行った。 岩屑流堆積物の広がりは、当初、鈴鹿山脈北部に限られると考えられていたが、広範囲に地表踏査を行った結果、鈴鹿山脈の東側に多数のクリッペが認められ養老山地まで追跡されることが分かった。これにより、岩屑流堆積物は、東西約30km、南北約60km広がっていることが判明した。これから推測される崩壊した海山の高さは、海底から約6000m程度であったことが推測される。 岩屑流堆積物の産状は、海洋性岩石の様々なブロックが、基本的には、地域差、大きさに関わりなく基質に支持された構造を持っている特徴を普遍的に示す。ただ、岩屑流堆積物内の流山のブロックの大きさ、密度は、南から北に行くほど大きくなっている。特に、最北部では、kmサイズの石灰岩ブロックが集合して一つの流山を形成している場合が多く、その場合、流山内のkmサイズのブロツク同士がスタイロライト面で接しているのが観察される。また、流山を指示している、火山砕屑粒子も北部より南部が細流になる傾向がある。これらの事から、岩屑流は北部で発生し、南方に広がっていったことが考えられる。これらの事から、陸上の岩屑流と類似のメカニズムで、水中でも岩屑流が流動・移動していったものと思われる。 玄武岩類の化学分析は、メジャー・マイナーエレメント伴に、XRFを用い十数カ所で行った。その結果、すべてホットスポット起源であることが判明した。 本研究計画に沿って2年間の調査を行い、ほぼ本研究の目的を達した。他に課題としていた岩屑流の堆積場は、研究期限後半に、証明できると思われる露頭を発見したが、降雪期に入り細かな野外調査が出来ず、結論が出なかった。
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