コーヒスタン島弧は「主マントル衝上断層」によってインド亜大陸と接している。この断層を挟む2つのルートにおいて現地調査を行い、以下のような成果を得た。 1 ジャルコットからバーブサールまでクンハール川最上流部に沿うルート ここには、ヒマラヤ変成帯の岩石が分布していて、その北限は、主マントル衝上断層によってコーヒスタン島弧の角閃岩および超マフィック岩と接している。ヒマラヤ変成帯の岩石は大部分が泥質片岩および泥質片麻岩からなり、結晶質石灰岩、正片麻岩、角閃岩、エクロガイトを含む。エクロガイト、結晶質石灰岩、および正片麻岩は、その上下を泥質片麻岩に挟まれていて、全体としてサンドイッチ状の構造をなしている。エクロガイトを含む高変成度の部分は、厚さ4000m以下の板のような形状であって、上下に接する低変成度の泥質片麻岩とともに、変成作用の後の変動によって褶曲している。約100か所の露頭から、各岩種の試料を約130kg採取した。 2 ドベールからチラスまでインダス川に沿うルート 調査ルートには、角閃岩、グラニュライト、および超マフィック岩が分布している。角閃岩とグラニュライトは、もともとハンレイ岩質の深成岩として形成され、グラニュライト相の変成作用を受け、さらにその一部が、角閃岩相またはそれ以下の温度圧力条件での後退変成作用を受けている。これらの下部地殻起源の岩石にはにはペグマタイト岩脈が貫入している。約20か所の露頭から、岩脈を含む各岩種の試料を約250kg採取した。
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