研究概要 |
琉球列島の喜界島には,標高と形成年代の異なる4つの完新世隆起サンゴ礁段丘が発達している.これらの段丘の形成要因については,4回の間欠的な地震隆起のみによって形成されたとする説と,その他にユースタティックな海水準変動が関与しているとする説の二つの見解が示されており,現在もこの議論は続いている.この問題を解決するために本研究では,まず段丘の分布高度を高精度で測定し,礁地形や同構成層の堆積物・造礁サンゴ化石を定量的かつ詳細に記載したうえで,これらを現在のサンゴ礁と比較することによって,各段丘形成時の汀線高度を従来の研究より高い精度で復元する.次に,復元された汀線高度と従来報告されている^<230>Th/^<234>U・^<14>C年代値および本研究で新たに得られた^<14>C年代値をもとに島の隆起年代をより精密に推定し,各段丘の形成にユースタティックな海水準変動が関与しているのを考察する. これまでの調査で,4つの完新世隆起サンゴ礁段丘はすべて現在のサンゴ礁の浅海部(特に礁斜面上部)で形成されたことが明らかになった.また,現在の礁斜面上部の水深1.5m地点で最も卓越しているPocillopora verrucosaの段丘上での分布高度から,各段丘形成時の汀線高度はI面形成時が8.5〜9.0mと10.5〜11.0m,II,IIIおよびIV面形成時がそれぞれ5.0〜5.5m,4.0〜4.5m,2.0〜2.5mと推定された.さらに本研究での^<14>C年代測定結果は,II,IIIおよびIV面については従来の報告とほぼ調和的であったが,I面については従来のものと異なるより新しい年代の造礁サンゴ化石も含まれていることが明らかになった.推定された汀線高度の結果からも,I面が年代の異なる2回の海面停滞期に形成された可能性が高い.よって平成13年度は,I面のサンゴ化石の^<14>C年代測定を重点的に行う必要がある.
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