研究概要 |
大阪平野の中・上部更新統を対象に,火山灰分析を行った.今年度分析した火山灰試料は,OD5ボーリングコア(三田村ほか,1998),上町台地南部の地下工事現場で採取した試料,兵庫県南部地震後に採取された浜ボーリングコア(吉川ほか,1998)である. このうちOD5コアについて火山灰層の再記載と分析を行った.OD5コアは1960年代に掘削され簡単な岩相記載は報告されているが,これまで一切分析が行われていなかった.OD5コアの火山灰層分析作業によって地質層序が明確になるとともに,特にMa3層準の火山灰層序の詳細が明らかになった.これまでに確立されてきた大阪平野地下の鮮新・更新統の火山灰層序と詳しく対比を検討することによって,これまでに明確に位置づけられていなかった火山灰層の存在が明らかになった.成果は投稿準備中である. 上町台地南部は,中部更新統の上部に相当する高位段丘相当層の分布深度が浅く,建設工事現場で露頭を観察する機会に恵まれるとともに,建設工事の際に採取されたボーリング資料が豊富である.故に,堆積物が比較的粗粒であるという欠点はあるが,中部更新統の上部の地質層序・構造,火山灰層序を検討するのに良好なフィールドである.地下工事現場で採取した試料からは,吉川(1981)の方法によって中位・高位段丘相当層から肉眼で認識できない火山灰層を3層準見いだすことができた.これにより,上町台地南部の中・上部更新統の層序を確立する手がかりを得ることができた. 浜ボーリングコアについては現在分析作業を継続中である.50cm置きに採取された約500個の試料のうち,およそ2/3を吉川(1981)の方法で分析済みである.また,中〜後期更新世の広域火山灰層の給源とされる火砕流堆積物が複数分布する宮崎県南部〜熊本県南部において比較試料を採取した.大阪層群のMa3に相当する千葉県上総層群国本層から比較試料を採取した.
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