研究概要 |
マグマの粘性係数に対する水の効果を明らかにするためガラス繊維引き伸ばし法による含水メルトの粘性係数測定を計画し,その準備段階としてガラスの水和実験を開始した. 試料は十勝岳1988-1989年噴火の本質噴出物と雲仙普賢岳1990-1995年噴火の第3ロープ溶岩で,ともに粉砕したあと1400〜1600℃の高温で溶融し均質なメルトを作り,その後直径0.5〜0.8mmの繊維状ガラスに加工した.それらを蒸留水とともにオートクレーブに入れ,次の条件で水和を試みた. 十勝A:360℃,200kPa,100時間;十勝B:360℃,60kPa,172時間;雲仙A:350℃,10kPa,12時間;雲仙B:400℃,300kPa,18時間 上記4実験のうち水和層が見られたのは雲仙Bのみで,試料表面に厚さおよそ0.1mm形成されていた.FT-IRによる定性分析から水が高濃度で存在することが確認された.十勝Bと雲仙Aには目立った変化が見られなかったが,十勝Aでは表面に著しい溶脱が認められた.溶脱の進行した深さは0.08mmと求められた.しかしFTIRによる定性分析の結果から,溶脱せずに残った部分には水が全く含まれていないことが確認された.このことは表面で水和が起こってもそれと同時に溶脱が起こり,水和層が維持されなかったことを意味する. 当初の計画では粘性係数の測定を開始しているはずだったが,試料の水和に予想以上に手間取り,測定開始には至っていない.しかし一部試料では水和層形成に成功しており,試料のサイズを工夫するなどにより粘性測定開始のめどが立った.一方で含水率コントロールの意味も含め,今後さらに温度・圧力・組成・時間を様々に組み合わせた水和実験も必要である.
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