マグマの粘性係数は水が入ると劇的に低下する。含水マグマの粘性測定は今までも行われているが、データ量は十分とは言い難く、また測定には大がかりな装置が必要だった。そこで本研究では、オートクレーブによって試料を水和させ、その粘性係数をガラス繊維引き伸ばし法で測定するという、簡便な方法を開発した。 実験に用いた試料は十勝岳1988-89噴出物、雲仙第4ドーム溶岩、白滝村黒曜石(合成)の3種類で、それらを1600℃で溶融したのち、直径0.6mm前後の繊維状ガラス試料に加工した。それらを純水とともにオートクレーブに入れ、200〜500℃、0.2〜30MPaで12〜172時間保持した。その結果ある条件下では、中心まで水和したガラスを作ることに成功した。例えば白滝村黒曜石を500℃、1.2MPaで44時間保持した場合、0.42wt%の水を含んでいることが顕微赤外分光による分析で確認された。しかし試料表面には結晶化などの変質が見られたため、その影響を取り除くためフッ化水素酸に5分間浸けて変質部を除去し粘性測定に用いた。 測定の結果、水の効果によると思われる著しい粘性低下が確認された。例えば上記黒曜石では800℃における粘性係数(Pa s)は対数スケールで9.34で、無水試料の粘性(11.48)に比べ2桁以上低かった。 このように従来より簡便な方法で含水マグマの粘性を測定するシステムを構築することに成功し、今後データの大量生産が可能になると期待される。
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