研究概要 |
本研究では,海洋地殻の3割を越えるとされる超塩基性岩の変質により生成するマグネシウム炭酸塩,特に炭酸イオンをイオン交換反応により結晶構造内に取り込むことのできるハイドロタルサイト族鉱物の生成機構を明らかにし,地球表層部における炭酸イオン固定や二酸化炭素の循環に及ぼす影響を評価することを目的としている.そのため,本年度は,千葉県安房郡鋸南町南佐久間,徳島県木沢村坂州,愛媛県八幡浜市頃時鼻の蛇紋岩帯とオマーンオフィオライトを研究対象地域とし,地質調査および試料(水および岩石・土壌)採取を行って各種の鉱物学的・地球化学的分析に供した.その結果,蛇紋岩中の細脈や蛇紋岩地帯から出る湧水中で,ハイドロタルサイト族鉱物を含む様々な含水マグネシウム炭酸塩鉱物の産出を認めた.それぞれの鉱物の生成に関して詳細に産状や共生関係を調べたところ,蛇紋岩化作用や蛇紋岩化に伴って生成したブルース石の溶解によって亀裂の空隙水がpH9以上の高アルカリに保たれ,その高pH溶液中に溶存するマグネシウムイオンと炭素イオンの直接沈殿によって生成する鉱物と蛇紋石の不一致溶解によって生成する鉱物に分類されることを明らかとした.また,その時生成する炭酸塩鉱物の種類は反応溶液のpH,二酸化炭素分圧,Mg/Ca比によって決定されることを熱力学的計算から明らかにし,本年度整備した雰囲気制御鉱物変質実験装置による反応実験でも,計算結果を指示するデータが得られ,蛇紋岩化やそれに伴う岩石-水相互作用のいくつかの素過程が明らかになりつつある.
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