研究概要 |
下部マントル物質として脚光を浴びているMgSiO_3-Al_2O_3系ペロブスカイト固溶体の単結晶合成を、岡山大学固体地球研究センターに設置されている"6-8"分割球型超高圧発生装置を用いて、20GPa・2000℃の超高圧高温下で試みた。合成実験は超高圧高温下での水熱法を用いた。この系の固溶体は、Al_2O_3成分が10%まで固溶することが知られており、本研究では現在までに8%のAl_2O_3成分を含む試料の合成を試みており、合成した試料は50μm程度の単結晶であった。4軸型X線回折計によりこの単結晶試料の構造評価を行った結果、格子定数a=b=4.8379(4)Å,c=12.9707(13)Å,α=β=90°,γ=120°の三方晶系の物質であった。MgSiO_3-Al_2O_3系固溶体では、マントル条件下で三方晶に属する未知相が存在すると言われているが、本研究で合成した試料がこの未知相であるかどうか現在検討中である。現在のところ、反射の消滅則と強度分布の検討からこの試料はラウエ群31mに属する可能性が強いことがわかっており、結晶構造の決定に尽力を注いでいる。もしこの試料が、これまで指摘されてきた未知相であるなら、地球内部における物質構成を考える上で大きな進展となるであろう。また、本研究課題の主題であるMgSiO_3-Al_2O_3系ペロブスカイト固溶体の単結晶合成に成功することにも努力しており、現在マントル科学の分野で問題となっているこのペロブスカイト固溶体中でのAlイオンの席分配の決定を目指している。
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