15種のユークライト隕石の鉱物岩石学的研究を行った。特に、ジルコンと酸化鉱物(スピネル、イルメナイトなど)の微細組織の観察や化学組成の定量を行い、その成因について考察した。クロムスピネルのTiの含有量は、ユークライトの変成度に関連していることを示した。また、3種のユークライト中に含まれるジルコンに関して、イオンプローブ(SHRIMP II)を用いてウラン鉛法による年代決定を行った。極度に強い熱変成作用を受けたユークライト(グラニュライト的ユークライト)と変成作用をほとんど受けていないタイプ1ユークライトのウラン鉛年代は、45.6-45.7億年であり、ほとんど差がないことがわかった。この年代は、ユークライトの結晶化年代といわれている。これは、熱変成作用が火山活動とほぼ同じ時期に起こったことを示す。現在、ユークライトの受けた熱史との詳細な比較を行っている。上記の研究途上で、基本的な鉱物組成や岩石組織が普通ユークライトに非常に類似するにもかかわらず、酸素同位体組成の全く異なるユークライト隕石の発見した(R.N.Clayton博士との共同研究)。これは、普通ユークライトとは全く異なる起源物質(別母天体)からできたが、普通ユークライトと同様な条件の火成活動・変成作用を経て形成されたと考えられる。ユークライトを形成したような大規模な火山活動を経験したような小惑星が一つではないことを初めて示した。今後、主要微量元素の全岩の定量分析を行い、その隕石の成因について明らかにする予定である。
|