本科学研究費補助金による本年度の研究実績は以下の2つにまとめられる。 1.日本近海の海水試料のネオジム同位体比測定 東京大学海洋研究所所属の白鳳丸KH-94-3次航海で採取した海水試料のネオジム同位体比測定を分析し、日本近海の北西太平洋におけるネオジム同位体比の3次元的分布を明らかにした。 房総沖及び小笠原諸島近海の鉛直分布は200mと2000mあたりに低い同位体比が存在することが分かった。これが何に起因するものなのか現在検討中である。又、三陸沖の測点のプロファイルは全体的に以前測定した千島列島周辺の観測点より低い同位体比を示す。これは、北太平洋深層水が南から北に流れていく過程において表層から供給される高い同位体比を示すネオジムが徐々に付加することで説明が可能である。これを裏付ける証拠として、表面海水が黒潮域で低く親潮域で高い同位体比を示す傾向が挙げられる。 2.北西太平洋及び中央太平洋の海水試料のサンプリング及びネオジム同位体比測定 2000年の6月から7月にかけて白鳳丸KH-00-3次航海に参加し、日本からハワイまでの北西及び中央太平洋の表面海水(約20試料)及び海底までの採水(1測点につき約15試料)を4観測点について行った。表面海水の幾つかの試料に関しては既に分析を行った。その結果、北緯40度付近の試料に比べ北緯20度付近のものは高いネオジム同位体比を示す事が分かった。これは、ハワイ諸島が高い同位体比を示すネオジムの供給源であることを示している。
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