平成12年度初頭より、当該研究テーマに基づき地球岩石試料中の希ガス元素・同位体測定を行っている。予定通り、希ガス同位体測定用の質量分析計に最新の測定・データ処理プログラムを導入することによって同位体測定結果の統計処理、必要な補正処理等の効率化に成功した。本研究は地球マントル起源の岩石試料の希ガス同位体組成を精密測定し、地球進化過程の理解を深めることにある。特に現在重要視されている、プレート沈み込み帯における希ガスの挙動の解明や、現在までほとんど分かっていない過去のマントルの希ガス情報の痕跡をもとめて様々な試料の分析を行っている。北海道南東部の幌満地域のカンラン岩体の希ガス組成は、地球大気成分がプレートの沈み込みに伴いマントル深部に際注入される可能性に対して世界で始めて明らかな証拠をもたらした。その成果は2000年度のゴールドシュミット会議、地球化学会年会で発表の後、国際誌Earth and Planetary Science Lettersに掲載された。また、地球形成時から現在に至るまでの地球大気-マントル系における希ガスの同位体進化モデルを構築し、ヘリウム同位体の時間変化を数値計算により求めた結果に関しても、2000年度のWestern Pacific Geophysical Meetingにて発表した。その論文は現在(2001年2月現在)、Earth and Planetary Science Letters誌にて査読の最終段階にある。数値計算に加えて、実験的に過去のマントルの希ガス情報を知るために太古代のマントル試料であるコマチアイトの希ガス測定も行った。その結果、隕石に普遍的に見つかる惑星型のヘリウム同位体の痕跡を発見し現在発表準備中である。
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