本研究の目的は近年めざましい進歩を遂げたアトミックレイヤーエピタキシーなどの技術を用いて、原子レベルで構造の制御された薄膜を作成し、その表面における光反応を調べることである。そして薄膜内の電子の量子閉じ込め効果が光反応に及ぼす影響を調べ、新奇な現象の発見を目指すことである。 本年度は表面、薄膜の構造解析に用いる反射高速電子回折装置の電子銃および電源を作成した。電源心臓部として高圧モジュール電源を購入し、抵抗分割して用い、電子銃の各電極にそれぞれ所定の電圧をかけることができるようにした。絶縁にはアクリルやポリイミドフィルムを用い、コンパクトに仕上がった。電子銃はセラミック付きニップルと電子顕微鏡用ポイントフィラメントを用い、自作した。アノード、ウェネルトなどの電極は大学内の金工室で作成した。ディフレクターとして2枚の平行電極に静電圧をかける方法を用いた。電子線の方位角を変えるために、このようなディフレクターを2つ用い、まず電圧Vで電子線をφ曲げたあと、次のディフレクターに-2Vをかけて-2φ戻す方法を用いた。蛍光板には導電性コーティングを行った特殊ガラスに蛍光材を沈殿させて作成した。これらの電子銃、電源、蛍光板、ディフレクターはうまく動作し、質のよいビームスポットを蛍光板上に得ることができた。 下地に用いるシリコン基盤を1500Kまで加熱し清浄化した後、30Kの低温に下げて薄膜成長を行うため、クライオスタットに直結して試料に接通電して加熱できる試料ホルダーを作成した。加熱中の試料の歪みをへらすための改良が望まれる。
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