本研究の目的は固体表面上の吸着構造を設計し、化学結合の状態(配向、結合次数)に大きな摂動を与えた上で、電子励起を行うことにより結合を活性化して、新規反応を開拓することである。 まず、発表論文にあるように、Cu(001)上にヘテロエピタキシャル成長したLiClの吸着サイトや構造、エネルギーを計算した。これらは、実験結果とよく一致した。次に、Mo(112)表面上の吸着酸素、吸着リンによる表面反応制御に関する研究を行った。これらの系は、特有の周期構造を複数示すことがわかった。特に、酸素に関しては、メタノールの選択的酸化(ホルムアルデヒド生成)に活性であることがわかっているが、これに関して、振動分光法を用いることで、酸素種の存在状態を明確にすることができた。メタノールの酸化過程について、同様に振動分光法で測定したところ、ホルムアルデヒド生成はきわめて早いために、中間体の同定はできなかった。リンに関しては、亜リン酸トリメチルを用いることによって、表面にリン原子をドープすることができた。そして、新たな周期構造が観測された。また、このようにして作成した表面においては、チオフェンの脱硫過程が起こり、ブタジエンが効率よく生成することがわかった。これらの結果は、表面上に、新たな反応場を作成することに成功したことを示している。これらの系にTP-ESDIAD/TOF systemを適用することで、反応過程のリアルタイム観察および、電子励起状態を経由した反応過程発現が期待されるが、これについては、現在試行を行い、最適な実験条件を探索しているところである。
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