蛋白質の折り畳み過程を詳しく観察することで、蛋白質のアミノ酸配列から折り畳み構造を予測するための手がかりが得られると期待できる。本研究は、蛋白質を構成する基本構造であるαヘリックスが作られる動的過程を、実験的に観察することを目的とした。具体的には以下の三つのテーマの実験を行い、成果を挙げることができた。 1)シトクロムcの折り畳み過程の測定。独自に開発した溶液混合セルを用いて、シトクロムcの折り畳み過程の時分割測定を、100μsの時間分解能で行った。シトクロムcが、二次構造とコンパクトさを同期させて折り畳みを進めることを明らかにした。本研究の成果は、Nature Stuct. Biol.誌や、PNAS誌に受理された。 2)ポリグルタミン酸のコイルヘリックス転移過程の観察。比較的短いポリペプチドが、αヘリックスが形成する過程を、溶液混合装置を使って追跡した。測定の結果、ポリグルタミン酸のコイルヘリックス転移には、いったん形成した短いヘリックス構造が連結して、長いヘリックスを作る運動の相があることを明らかにした。本研究の成果を、JACS誌に投稿すべく現在準備中である。 3)アポミオグロビンの折り畳み過程の時分割測定。アポミオグロビンは7本のヘリックスを持つ蛋白質である。これらのヘリックスが段階的に形成する様子を、時分割測定により明らかにした。特に、折り畳み開始後の100μs以内に超高速のヘリックス形成過程があることを実証した。
|