本研究の目的は、気相中の電子励起分子の光解離反応に対する磁場効果を解明することである。 本年度は第一に発光検出装置の強化を行い、更に、この装置と平成12年度に製作した実験装置及び予備実験の結果を用いて、解離生成物の収量に対する磁場効果を実験的に明らかにすることを試みた。 本研究では、ポンプレーザー励起によりアセトアルデヒドの解離反応を引き起こし、その後、解離生成物であるホルミルラジカルの収量測定にプローブレーザーによるレーザー誘起蛍光法を用いている。ポンプレーザーの波長が解離限界近傍の場合、解離生成物の収量は非常に小さいのでレーザー誘起蛍光も非常に弱く、解離生成物のレーザー誘起蛍光の検出がアセトアルデヒドの非常に強い蛍光に妨害される。そこで、プローブレーザーの繰返し周波数をポンプレーザーの半分にし、プローブレーザーが照射された時と照射されない時の信号の差をとることによりこの問題に対処することにした。このため、ゲーテッド・インテグレーターとアナログ・プロセッサー(二つの信号の差をとる装置)を購入し、それに伴い測定プログラムの改良を行った。このような発光検出装置の強化により解離生成物の収量を検出することに成功したが、現在のところ解離生成物の収量に対する磁場効果は確認されていない。今後、ポンプレーザー及びプローブレーザーの波長を広範にスキャンして解離生成物の収量に対する磁場効果の有無を確認する予定である。また、ロックイン法による検出感度の向上を予定している。
|