研究概要 |
平成12年度の研究計画に従って研究を行い、以下に示す結果を得た。 当研究室で新しく開発した高速振動粉砕法を用いる固体反応により、フラーレン類の骨格変換反応を検討した。すなわち、フラーレンC_<60>と4,6-ジピリジル-1,2,4,5-テトラジンとの固体反応によって、[4+2]付加環化反応とそれに引き続く脱窒素反応が起こり、付加体がほぼ定量的に得られることが明らかとなった。この付加体は、溶液中でシリカゲルとの接触によって、炭素-炭素結合の開裂と転移を伴った炭素-窒素結合の生成を含む変換反応がほぼ定量的に進行し、これまでにほとんど例の無いC_<60>の1,2,3,4-テトラ付加体を与えることが明らかとなった。その構造はスペクトルデータならびに、単結晶のX線結晶構造解析によって明らかにした。一方、先の付加体を固体中でC_<60>と加熱することによって、今度は、付加体に対して第二のC_<60>が[4+2]付加環化した、ダイマー構造を有する誘導体が新たに得られた。これは、固体反応条件では、活性種が溶媒和されることなく存在するため、溶液反応では進行しなかった反応が起こったものと考えることができる。 また、1,2,3-トリアジンとC_<60>との反応も検討した。まず、4-メチル-1,2,3-トリアジンとの反応では、[4+2]付加環化反応とそれに引き続く脱窒素反応によって、1:1付加体が得られた。次に4,6-ジメチル-1,2,3-トリアジンとの反応では、1:1付加体が得られたが、これは分子内の窒素の位置が先程のものとは異なっていることが明らかとなった。これは、4,6-ジメチル-1,2,3-トリアジンから熱的な窒素の脱離によって2,4-ジメチルアゼートが発生し、これがC_<60>と[4+2]付加環化したものと考えられる。現在、これらのC_<60>に縮環したアザシクロヘキサジエンの分子内[4+4]環化付加に対する検討を行っている。
|