本研究では、配位結合や水素結合などの非共有結合により生成する自己集合超分子錯体を基盤に用いるフラーレンレセプターの構築を計画した。我々は既にカリックス[5]アレンがフラーレン類の有効なレセプターになることを報告している。そこで、この骨格に種々の水素結合性官能基や配位結合性官能基を導入し、超分子錯体が形成可能か検討した。ウレア基を導入したカリックス[5]アレンはクロロホルム中で超分子二量体を形成した。また、この超分子二量体はC60及びC70を包接した。酸の添加によりこの超分子錯体は分解し、C60及びC70を溶液中に放出した。水素結合を駆動力に二量化する超分子フラーレンレセプターの開発に成功した。また、この超分子レセプターは酸の添加により生成を制御できることが分かった。次に、ビピリジンを導入したカリックス[5]アレンを合成した。この分子は銀イオンの添加により超分子錯体を形成した。また、この分子の生成をESI-MSを用いて確認した。C60及びC70に対するこの超分子錯体の包接能の評価はESI-MSを用いて行われた。結果、このレセプターはC60に対して高い選択性を示した。我々は二分子のカリックス[5]アレンを共有結合で連結したフラーレンレセプターがC70に対して選択性を示したことを報告していることから、今回開発した超分子錯体がC60に選択性を示したことは非常に興味深いことである。 以上のように、非共有結合性相互作用を駆動力に用いる自己集合系超分子フラーレンレセプターの合成に成功した。
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