研究概要 |
本研究では、海産天然物の中に見出される「異常」な生合成経路によって産生されたと考えられる対称構造を有するトリテルペンに注目し、それらの合成研究を行った。 1,海綿の一種より単離された抗白血病活性を示すNaurol Aの合成。 Naurol Aの世界最初の合成を(ジアステレオマー混合物ではあるが)達成した。鍵反応にStilleカップリングを用い、共役テトラエン構造を幾何異性を制御しつつ一挙に構築した。合成品の各種スペクトルデータは天然物のそれとは全く一致せず、天然物の構造決定に誤りがあることを明らかにした。現在は、天然物の真の構造を模索中である。 2,海洋軟体動物の生産する防御物質Testudinariol A及びBの合成。 Testudinariol A及びBの世界最初の合成を達成した。不斉点の制御には、分子内マイケル付加型環化反応、分子内エン反応を用いた。幾何異性の制御には、(Z)-選択的Horner-Emmons反応を用いた。アリル位同士のカップリングにはスルホンカップリングを用い、幾何異性を損なうことなく目的化合物へと導いた。全ての不斉中心及び幾何異性を制御した。本合成によって、提示されていた構造に誤りがなかったことが証明された。現在は、各段階の反応条件最適化を行っている。
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