磁性材料の重要な特性の一つに、磁気光学効果が挙げられる。磁気光学効果は光吸収に密接に関係しているため、様々な色相を備えた分子磁性体は、従来の磁性材料では難しかった可視部の磁気光学効果を制御できる可能性を秘めている。本研究では、電気化学的に合成した室温付近に磁気相転移温度をもつK^I_aV^<II/III>_xCr^<II>_<1-x>[Cr^<III>(CN)_6]_y磁性薄膜において、磁気光学効果および非線形磁気光学効果を観測することに成功した。 K^I_aV^<II/III>_xCr^<II>_<1-x>[Cr^<III>(CN)_6]_y磁性薄膜の色相は、組成比がx=1のとき青色、x=0.30のとき水色、x=0.22のとき緑色、x=0のとき無色であった。この色の変化は、可視部の吸収帯(1_<max>=620nm)が長波長シフト(1_<max>=730nm)することによることがわかった。この系のファラデー効果を測定した結果、可視部に強い信号が観測された。また、x=1から0に変化させるのに対応して長波長側へのシフトが観測された。これは、Cr^<II>の増加に伴って、V^<III>とCr^<III>間の電荷移動吸収帯が影響を受けたことに起因すると考えられる。以上のように、色相を制御できる室温カラー磁性薄膜においてファラデー効果を制御することに成功した。また、電解合成を施していない試料においてはSHGはまったく観測されなかったが、電気化学的に合成した薄膜では、明確なSHGが認められた。このSHG強度は組成依存性を示し、3元金属化が必要であることも明らかになった。
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