CooAは、元来一酸化炭素(CO)を生理的エフェクターとするヘム含有転写調節因子であるが、昨年度の研究により一酸化窒素(NO)ともセンサー部位であるヘムと反応し得ることを見出し、その反応様式を解明した。本年度は、NOがCOと同様にCooAの生理的エフェクターとして機能するか否かを検証するとともに、CooAがCOとNOを認識・区別する機構について解明した。 1.NOはCooAのエフェクターとして機能しない。大腸菌を宿主とするin vivo転写活性化能測定系を構築し、NOによるCooAの活性化能を測定した。その結果、CooAはNO存在下では全く活性を示さないことが分かった。同じ測定系を用いた場合でもCO存在下では高い活性を示したことからCooAはNOとCOを区別し、NOがエフェクターとして機能しないようにするための機構を内包していることが示唆された。 2.CooAはいかにNOとCOを区別するか。NOおよびCOとの反応によって生成するCooA中のヘム化合物の違いを分光学的手法を用いて明らかにし、CooA活性化との関係について調査した。その結果、配位したNOまたはCOのトランス位に特定のヒスチジンが軸配位子として存在していなければCooAが活性化されないことがわかった。このヒスチジンに対する部位特異的変異導入を用いた研究により、CooAはこの軸配位子の存在の有無によってNOとCOの配位を区別しており、結果的にCO選択的に活性化されることが分かった。この知見を基にヒスチジン軸配位がCooAの活性化に与える影響を検討したところ、以下のような機構の存在が明らかとなった。すなわち、COの配位がCooA中のヘムにヒスチジンを軸とする大きな配向変化を引き起こす。これにより、CooAのダイマー構造の形成に重要な役割を果たすヘリックスとヘムとの相互作用を誘起され、CooAの四次構造が標的DNAと結合しうるように変化する。
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