金属錯体を主鎖に持つ非天然型アミノ酸及び新規ペプチドの合成

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12740366
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 岡村 高明 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助手 (90252569)
• キーワード: 非天然型アミノ酸 / 非天然型ペプチド / アミド / ビピリジン / ルテニウム / 発光スペクトル

研究概要

2,2'-ビピリジンの4,4'-位または5,5'-位にアミノ基とカルボキシル基を非対称に導入した非天然型アミノ酸を合成し、保護基の導入・脱離及び縮合反応の手法を確立した。逐次縮合反応により、トリペプチドの合成に成功した。両端をアミドで修飾したモノマーも比較のために合成した。シス-ジクロロビス(ビピリジン)ルテニウム(II)との反応により、配位子のモノマー、ジペプチドに対しトリスビピリジンルテニウム(II)錯体の誘導体を得た。錯体のアセトニトリル溶液の吸収スペクトルを測定すると、5,5'-誘導体ではモノマーからジペプチドにすることで配位子のπ-π^*に基づく吸収が350nm付近に長波長シフトして観測された。また、MLCTバンドはジペプチドの方がより長波長に観測された。^3MLCTに帰属される発光スペクトルバンドも長波長に観測され、ビピリジンとアミド基のπ系が共役し、π^*軌道のレベルを低下させていることが明らかとなった。
モノマーのサイクリックボルタモグラムを測定すると、酸化側にルテニウム中心の酸化還元に伴う1つの可逆な酸化還元波が観測された。ジペプチドの場合も同様な1つの酸化還元波を示す。還元側には通常、配位子の還元に伴う3つの酸化還元波を示す。ジペプチドの場合は1つめの還元波が2つに分かれ、電流値は約半分で観測された。即ち、アミドで架橋した配位子が最も還元されやすく、架橋部分で共役している為に、1電子目と2電子目で酸化還元電位に差が生じ、2つに分かれたものと解釈できる。これは先の結果とも一致する。
現在、錯体のアミノ酸を単離し、錯体での縮合反応を行い、より重合度の高い非天然型ペプチドの語合成を試みている。

研究成果

• [文献書誌] 岡村高明,上山憲一: "フェロセン骨格を主鎖に持つ新規ペプチド錯体の合成と性質"高分子加工. 49・6. 261-266 (2000)
• [文献書誌] W.-Y.Sun,J.Xie,T.Okamura,C.-K.Huang and N.Ueyama,: "Novel Tripodal Chelating Ligand for Appending and Encapsulating Metal Ions.Crystal Structure of a Parachute-like Hydrogen Bonded Complex"Chem.Commun.. 1429-1430 (2000)
• [文献書誌] W.-Y.Sun,J.Fan,T.Okamura and N.Ueyama: "Synthesis and Structural Characterization of a New One-dimensional Chain Coordination Polymer of Copper (II) with Diethylenetriamine and 1,3-Bis (imidazol-1-ylmethyl)-5-methylbenzene"Inorg.Chem.Commun.. 3. 3541-544 (2000)
• [文献書誌] W.-Y.Sun,B.-L.Fei,T.Okamura,Y.-A.Zhang,T.Ye,W.-X.Tang and N.Ueyama,: "Structures of [M(cbim)_4(NO_3)_2] [M=Cd(II), Co(II) and Ni(II) ; cbim=4'-Cyanobenzyl-1-imidazole] in the Solid State and in Solution"Bull.Chem.Soc.Jpn. 73. 2733-2738 (2000)
• [文献書誌] W.-Y.Sun,Y.-A.Zhang,T.Okamura,T.Ye and N.Ueyama,: "Synthesis and Crystal Structure of a New Two-Dimensional Coordination Polymer, {[Co^<II>(imbz)_2]・H_2O}_n [imbz^-=4'-(Imidazol-1-ylmethyl) benzoate Anion]"Chem.Lett.. 1222-1223 (2000)
• [文献書誌] A.Onoda,Y.Yamada,M.Doi,T.Okamura and N.Ueyama: "Dinuclear Calcium Complex with Weakly NH…O Hydrogen-Bonded Sulfonate Ligands"Inorg.Chem.. 40・3. 516-521 (2001)