昨年4月1日付けで申請時の所属機関((財)山形県テクノポリス財団・生物ラジカル研究所)から現在の所属機関(甲南大学理学部)へ異動した。そのため研究環境に大きな変化があり、基本的な実験設備・器具類(NOガスのライン、配位子合成などの器具)の調達などにかなりの時間を費やさざるを得なかった。 1.センサー部位の構築に関する研究:情報伝達系のシグナルアクセプター部位としてのジチオカルバメート鉄錯体の新規デザインを行った。最終的には水溶液系での情報伝達系の構築が目的ではあるが、本年度は時間の関係上より取扱いの容易な非水溶媒系にて実験を行った。ベンゼン環をブリッジとする新しいジチオカルバメート配位子を合成し、配位子の剛性を高め、NO結合に伴う力学的伝達の可否を溶液中にて調べた。構造変化のより詳細な検討を行うために、現在結晶構造解析のための試料を作成中である。 またこの系については、錯体部位を2カ所に増やせるので、本筋とは離れるが距離をコントロールできるビラジカルの系を構築できるので、その性質にも興味がもたれる。 2.シグナルアクセプター側の選定に関する研究:上記のように、現在ベンゼン環をブリッジとして同一分子中にアクセプターを設定している。外部アクセプターについても今後検討していく予定である。 なお、所属機関の異動に伴う研究環境の変化の影響が予想以上に大きく、年度当初に提出した研究実施計画の遂行が大幅に遅れていることをお詫びする。ようやく、基本的な設備が整いつつあるので、次年度においては、早急に計画を遂行していきたい。
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