メタロセン系触媒の出現によりオレフィン重合触媒の開発は精力的におこなわれているが、複核錯体の重合能が検討されている例はほとんどない。そこで本研究では、異なる金属からなる複核錯体を合成し、オレフィン重合を試みると同時に、触媒の重合活性能と電気化学的データとの相関関係を明らかにすることを目的とした。 シクロペンタジエニル基に二つのメチル基を有するジルコノセンと、ロジウムからなる複核錯体は、オレフィン重合において、対応する単核ジルコノセンに比べ、およそ2倍の重合活性および分子量を与えることが報告されている。そこでさらに詳細を検討するために、シクロペンタジエニル基に四つのメチル基を有する同様の単核ジルコノセンおよび対応するロジウムージルコニウム複核錯体を合成し、重合反応を検討した。その結果、先の錯体とは異なり、単核と複核錯体の重合活性、得られたポリマーの分子量には大きな違いは見られなかった。これらの錯体においてロジウムは重合活性を示さず、重合場となるジルコニウム周りの立体的環境は単核と複核ではほぼ同一であるため、ロジウムの効果はジルコニウムの電子状態に効いていると考えられる。そこで、錯体の電子密度の見積もりの指標として、電気化学的測定を試みた。その結果、複核にすることにより電子密度はいずれも高くなっていることを示差するデータが得られた。電子密度が高くなっているにもかかわらず、後者の錯体においては、重合活性が向上しなかったことより、金属周りの4つのメチル基による立体障害が障害となり、いくら電子密度をあげても、活性能には反映されないと考えられる。今回の結果を踏まえ、現在さらに効率的な新規な触媒設計に取り組んでる。
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