研究概要 |
二光子吸収により光化学反応を誘起して液晶の相構造制御を行うため,本年度は二光子吸収により光異性化するアゾベンゼンを開発し,光異性化挙動を検討した。アゾベンゼンの光化学反応を二光子吸収によって誘起するため,二光子吸収性を示す化合物をアンテナ部位としてアゾベンゼンに導入した。本研究では,二光子吸収が効率よく起こることが報告されているローダミンBをアンテナ分子として用いた。ローダミンBを導入したアゾベンゼンのcis体に,ローダミンの吸収極大である550nmの光を照射すると,スペクトルはほぼ完全にtrans体のスペクトルに変化した。一方,ローダミン部位を有しないアゾベンゼンを用いると,trans体,cis体のどちらも550nmには吸収を示さず,550nmの光を1時間以上照射してもスペクトル変化は観察されなかった。以上の結果から,550nmの光照射によりローダミンを励起することで,この波長に吸収のないアゾベンゼンのcis-trans光異性化が誘起されることが明らかになった。これは,ローダミンがアンテナ部位として機能しており,ローダミンを励起するとその励起エネルギーがcis-アゾベンゼンに移動しcis-trans光異性化が誘起されることを示唆している。蛍光スペクトルを測定した結果,アゾベンゼンがtrans体のときはローダミンの蛍光はほとんど消光されないが,cis体へ異性化すると効率よく消光されることがわかり,ローダミンの励起状態からcisアゾベンゼンへエネルギー移動が起こることが支持された。
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