高強度の紫外パルス光が導入できる中空型近接場プローブをピコ秒近接場分光システムと組み合わせた新しいシステムを構築し、システムの性能を評価した。具体的内容は以下の通りである。 1.市販のマイクロピペット作製機のレーザー集光部を調製して、中空型プローブを再現性よく作製する技術を確立した。 2.剛性の高い中空型プローブを制御できる新しいプローブホルダーを開発した。 3.プローブへ励起光を導入するための光学系を設計、構築した。 4.標準試料を用いてシステムの性能評価を行い、約300nmの空間分解能でトポグラフィー像、光学像が測定できることを確認した。 5.本システムによる実験の前段階として、従来型のピコ秒近接場分光システムを利用して、ポリチオフェン誘導体薄膜に励起光を照射し、高分子鎖のコンフォメーション変化による蛍光スペクトル変化を局所的に誘起することに成功した。薄膜中に見られるマイクロメートルサイズのドメイン中では高分子鎖が動きやすく、蛍光スペクトル変化が大きいことも分かった。 今後は開発したシステムを用いて、有機薄膜、無機薄膜の局所領域に高強度の励起パルス光を照射し、誘起された形状変化や化学反応を場所や時間、励起光強度や励起波長などの関数として調べ、そのメカニズムを明らかにする予定である。
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