研究概要 |
近年,我々はトロポノイドの構造的な特徴を活かした機能性ホストの開発をおこっている。今回,トロポノイドに種々のイオノファー(アームドクラウン,アザクラウンエーテル,大環状ポリアミン,シクロファン)を組み合せたトロポノイドイオノファーを合成することができた。 各種トロポノイドイオノファーの水銀イオン液膜輸送実験をおこなったところ、トロポノイドチオアームドクラウンエーテルは水銀イオンを高速で液膜溶媒に抽出するが,5M塩酸への逆抽出をおこなうことはできなかった。このことは,トロポンカルボニル酸素とチオアームドクラウンドナーが水銀イオンと強く配位しているためと考えられる。非環状型ポーダンドはトロポノイドジチオクラウンエーテルよりも水銀イオン親和性が著しく低下し,トロポノイドテトラチアシクロファンは液膜溶媒(クロロホルム)に対する溶解性が乏しく,水銀イオンの輸送速度も遅い。これらのことから,優れた水銀イオン輸送キャリアーの分子設計としては,1)トロポン官能基が錯体形成ではなく逆抽出を促進する。2)液膜輸送溶媒に対する溶解性が高い。3)環状構造が好ましいことがわかった。 トロポノイドジアザクラウンエーテルは金属イオン存在下で顕著なUVスペクトル変化を示すことから,トロポン環が金属イオンを検出するためのクロモファーとして利用できることを見い出した。X線結晶構造解析の結果から,トロポンクロモファーの錯体形成前後の構造変化と機能を解明することができた。 さらに,蛍光分子(アントラセン,ナフタレン),トロポン並びにジアザクラウンエーテルを組み合せたトロポノイドフルオロイオノファーを合成することができた。
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