レーザー照射条件と生成微粒子の粒径との関係の解析に重点を置いた。昨年度に引き続き、Agをターゲットとして用い、照射波長との関係を調べた。本年度は波長の数を増やした。また、粒径測定はTEM画像を用いて行う必要があるが、TEMサンプル作製方法の最適化も行った。それらの結果、銀微粒子の粒径は生成効率の低い波長ほど小さくなるという照射波長に対する明確な依存性を示すことが明らかになった。この結果は、昨年度の研究で我々が明らかにした、生成した微粒子が生成後に照射されるレーザー光をさらに吸収する「再吸収機構」を用いて説明できる。再吸収によって微粒子はターゲット表面に到達するレーザー光のエネルギーを減少させ、生成効率を低下させると同時に自らも分解されることによって粒径が小さくなると考えられる。 さらに今年度はレーザーアブレーションにおいて重要な因子であるレーザー光のパルス幅と生成効率、粒径との関係を調べた。フェムト秒パルスとナノ秒パルスを照射した結果を比較したところ、気相中のアブレーションとは異なり、フェムト秒パルスの方がナノ秒パルスに比べて生成効率が低下し、粒径が小さくなるという結果が得られた。この現象は再吸収機構によって説明できない。電子エネルギーが格子のエネルギーに変換される過程における溶媒への熱エネルギー拡散が重要な役割を果たしていると考えている。すなわち、フェムト秒パルスを照射した場合には電子-格子緩和過程において溶媒への熱エネルギー拡散によってターゲット温度の上昇が低くなるのに対し、ナノ秒パルスは格子緩和した状態においても繰り返し光子が照射され、ターゲットの温度を上昇させると考えられる。
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